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2010年
2月16日(火)

■……「森」に関する私の記憶

 (「ムーミン展」と「チャタレイ夫人の恋人」)
  少し前のことになりますが、心斎橋の大丸で「ムーミン展」があり、駆け足で見にいきました。カラフルでアニメタッチな展示を期待していたのですが、原画もモノトーンな雰囲気の作品が多かったように記憶しています。ムーミンといえば日本では、ムーミン谷を舞台にムーミン一家のほか、ミーやスナフキンといったキャラクターのおかげか、ほのぼのしたテレビ番組として有名です。

  インドのカレーが日本人の口に合うように加工された(本当かどうか知りませんが)ように、ムーミンも日本人向けに加工されている感じです。展示作品からはそのように感じました。私はとくにムーミンおたくやファンではありませんし、アニメに詳しいわけでもありません。それでも、展示物からは、北欧の厳しい冬の自然を感じました。

 イギリスの作家D・H・ロレンスに「チャタレイ夫人の恋人」という作品があります。これは文学作品としてよりも、その邦訳のわいせつ性をめぐる裁判(チャタレイ裁判)で有名になった作品です。この作品では、非常に肉感的な男性が森の番人として登場し、生命力、力強さをイメージさせ、お金や社会的地位の対比として表現されています。

(生と死の境界線としての「森」)
  以前読んだ本に、「海辺のカフカ」(村上春樹)という作品があります。この作品にも生と死の境界のメタファ(暗喩)として「森」が出てきます。また、紀州・新宮を舞台に多くの作品を残した中上健次の作品にも鬱蒼(うっそう)とした雰囲気の森が暗示的に登場します。

 日本の森を表現する言葉の一つに「照葉樹林」あるいは「照葉樹林文化」というものがありますが、「鬱蒼(うっそう)とした」という雰囲気がぴったり当てはまる感じです。ちょうど「もののけ姫」に出てくる森林のイメージですね。もともと日本には自然崇拝(アニミズム)のような文化や土壌があるためだ、というような説明も成り立つかもしれませんが、私は専門家ではないのでそこはよくわかりません。ただ、“なんとなく恐ろしい”という感覚は、うまく表現できませんが大事な感じがします。“なんとなく恐ろしい”という感覚がなくなることは、「人間は何でも制御できるんだ」ということに直結しそうな気がします。もちろん現代の科学技術で制御できる部分もあるのでしょうけど、そういう方向に不安も感じます。

(あなたに中上健次が理解できますか?)
  もう10年以上も前のことですが、縁あって作家の方に紀州の森を案内していただく機会がありました。車中でいろんな話をした記憶があるのですが、ほとんど覚えていません。というのも私にとってかなりショッキングな指摘を受けたからです。その話はたわいもないことですが、こういうことです。私がたまたまその作家が書かれた中上健次の短編をめぐっての短文の印象について「私も(あなたが指摘しているように)その短編の同様の箇所が好きなのです」と話しました。

 そこから私が調子に乗って中上健次のいくつかの作品について話し出したとき、それまで黙って聞いていた作家が私に静かにゆっくりとこう言いました。「中上健次は好きですか?」

  その一言で私はものすごく恥ずかしい気持ちになり、それ以後口数が少なくなってしまいました。その作家は中上健次と同じ熊野で生活をし、かつ私なんかよりはるかに中上文学を理解しています。くだんの短文についても、短編の本質的な部分(と私には思われる)を評価しながらも、「中上健次の熱心な読者ではなかった」というような、抑止を利かせつつ距離感を保っている姿勢が感じられました。それと比較して、私はといえば全く熱心な読者でもないのに、あることないことをぺらぺらと、それこそ薄くってぺらぺらな話を垂れ流していたわけです。

  「中上健次は好きですか?」という私への問いかけは、言葉を換えれば「あなたに中上健次が理解できますか?」ということと同じ意味合いを持ちます。

 こういうこともあってか、「森」というと私の場合、少しほろ苦い記憶が蘇ってきます。ほろ苦くはありますが、こうした記憶はおそらくですが経営者としての私が暴走しないよう、「たが」のような役目も担っているのだと、自分自身に言い聞かせるようにしています。



 







 
※写真は全てイメージです
 
 
 
(文:与那嶺 学)
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